2016年8月12日金曜日

時間

時間は待ってくれないという言葉を身に染みて実感します。最近まで真冬のような感じだったのですがもう真夏です。子供達の表情も頬っぺたが赤くしていた季節から、こんがり日焼けした表情になっています。妻は既に秋物の服を出し始めまて品定めをしていました。大人の女性は未来をしっかり考え備える能力は男性よりも長けているように思いますが、それなのに誕生日がくると溜め息ばかり付きます。先に対する備えには強く、時を重ねる事に弱いというちょっとした矛盾。ですが、共通して言えるのは無駄にしてはいけないって事でしょうか?本日も引字圭佑の晴天日記をご覧頂きありがとうございます。

先日、お盆という事で妻の故郷に行き両親とお兄さんのお墓参りに行きました。私は妻の両親と面識がなく写真でしか知らない。妻には兄妹がいました。お兄さんは私の妻とその下の妹を両親が亡くなってから、しっかりと面倒を見ていたそうです。結婚をする際も私は許可を得るためにお兄さんに頭を下げた時を思い出す。

しっかり者で笑顔が少ない印象で「引字さん。よろしく頼みます」と低い重たい声で言われた時の真剣な表情、強い眼が今でも忘れられない。昨年、そのお兄さんは突然亡くなった。お兄さんは孫も出来たばかりで幸せな中。お酒を飲んだ後、浴槽に浸かり突然亡くなった。

妻はその一報を聞いた時に泣き崩れた。両親を亡くし、面倒を見てくれた兄まで亡くしたのだから相当苦しかったのだと思う。妻の実家にお兄さんの奥さんが暮らしているが近い内に息子さん夫婦の家で暮らそうと考えてるようだ。もしそうなると妻の実家は売りに出されるか、取り壊されるかのどちらかであろう。

私たちは挨拶をしに妻の実家へ向かい、妻は沢山の思い出を振り返り私に話す。アルバムを取り出し妻が私に見せながら当時の思い出を補足する。両親と幸せそうに暮らす3人の子供達、そこには沢山の笑顔があった。妻も、その両親も、お兄さんも、妹さんも・・・。

しかし、写真紹介を進めていく内に両親の姿が無くなり、お兄さんの笑顔も少なくなっていた。しかし妻と妹さんの笑顔は変わらずそこにあった。妻が私に気づいたように補足する。「お兄ちゃんね言葉に出さなかったけど大変だったみたい。私はこの後すぐに就職して、お金の協力は少なからず出来たけど、学生だった妹をちゃんと卒業させる事や私たち(妻と妹さん)を苦しませないように手続きや家族の管理をしていたの。仕事も休まず深夜に帰宅する事が多くて、いつかは体に限界が来るんじゃないかな?って心配してたけど、私達には笑顔で『大丈夫』って強がってた」

アルバムに無くなったお兄さんの笑顔。だけど力一杯の『笑顔』を妹たちには見せていた。そして私たちの結婚挨拶で一切表情を変える事無く私を強い眼差しでずっと見つめていた後に、妹さんと二人きりで日本酒を飲み、泣き笑いながら歓迎していた事。アルバムにはそのような表情は一切無かった。しかし妻は当時の写真を観るとお兄さんが見せていた表情を思い出すことが出来る。

もう妻の知るお兄さんに会えないのですから私は少し残念に思いました。
すると、お兄さんの奥さんが最近(昨年)までの写真を出してくれた。そして私は初めて見るお兄さんの笑顔がそこにあった。孫を抱きかかえながら力一杯ではない素のままの優しい笑顔。妻は「昔のお兄ちゃんの笑顔だ」と懐かしみながら見つめる。

妻は大切な家族の死を30後半という若さで3人も見てきた。そして私には冗談交えて必ず言う事がある「私より先に逝かないでね」。これから先の事は分かりませんが私はその冗談を受けて軽く頷き、妻の手を握り共に歩き始める。例え側にいなくても写真を見たら思い出せるように同じ歩幅で大切に歩いて行く。

私は仕事や友人には決して存在しない。『家族の時間』と言うモノをお兄さんや妻に気づかされたのかもしれない。

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