2016年7月15日金曜日

先輩の後悔

最近次男が妙に鰹節やするめ、椎茸等一般の子供が苦手な食べ物を好んで食べます。とは言う物の近場で美味しい特産品として取り上げられる食材なので私が子供の頃に食べた味とは全く違うんでしょうね。しかし、椎茸の味が子供ながらに分かるとは・・・。中々の通ですよね・・・。本日も引字圭祐の晴天日記をご覧頂きありがとうございます。

つい先日、私をよく面倒を見てくれた元先輩と居酒屋で飲みに行った。その先輩は独立して今は小さな会社を運営してる社長です。久しぶりの酒を交わしながらの再会なので募る話を沢山しました。そんな中、先輩がある話をしてきた。「引字君、家庭はどうだい?」先輩は会社を辞める前からずっと奥さんとは上手くいっていなかった。私はもしかしたら離婚でもしたのかな?と頭を過らせながら「上手くいってますよ。最近は子供の成長が楽しくて」と伝えると先輩は「そうか・・・」と酒を飲み俯く。私は『先輩は?』なんて軽々しく聞けずに少し静かな間が立ち込めた。店員さんが「焼き鳥です」とテーブルに置いた後、静かな間が終わり先輩が口を開く。「俺さぁ、文句ばっかり言ってたけど・・・今思うと後悔ばかりなんだよね」先輩は汗ばむグラスの露を見つめながら遠い目をして語る。私は「何かあったんですか?」と聞くと先輩はグラスから目を離し私を見て「妻が末期癌なんだ」と告げた。

私は返す言葉が見当たらず酒を一口飲んで「飲んでて、大丈夫なんですか?」と聞くと先輩は「今日は大丈夫なんだ。妻がそうしてくれって言ってたから」と言う。先輩は過去を思い返すように語る。「結婚した当初は幸せだった。共働きで子供を育てて、必死だった」先輩は焼き鳥を一つまみして話を続ける。「子供が成長して大人になるにつれて、生活に余裕が出てきたある日。突然喧嘩ばかりになった。原因は本当に些細な事だったと思う。毎日居酒屋に通って贅沢しすぎとか余裕あるだろ?みたいな始まりだった」私は過去の先輩を振り返り「よく話してましたもんね」と返すと先輩は頷きながら話を続ける「私が独立して会社を建てる事も猛反対していたしな。妻は妻で会社の重役を任せれられる立場。どこか劣等感に感じてた所があったのかもしれない。私は妻の反対を押し切り会社を建てた」テーブルに飲み物のお代わりがやってくる。

先輩は冷えた新しいグラスを額を当てて話す「凄く大変だった。だけど妻の助けを借りず、ずっと衝突しながらも、何とか軌道にのせられるまでやってきた。私は妻に勝ったとその時に思ったんだよ」先輩は酒を口に含み喉に流し込むと「私は勝ち誇った表情で妻に報告した。すると妻から『良かった』という言葉と『余命』という言葉を聞いた時に無意味だったプライドが一気に崩壊した」先輩の目から涙がにじんでいる。

先輩は泣き上戸と言うわけでなくどちらかとういうと笑い上戸のはずだった。先輩は酒を少し飲んでは溜め息をついての繰り返しだ。今まで抑えていた気持ちを爆発させたかったのだと思う。「この20年間近く、ずっと衝突ばかりで何もしてやらなかったのに・・・大変そうと気を使って言わなかったアイツに・・・」悔しさと苦しみを混ぜた表情をしながら先輩は語る。私は最後まで何も言えなかった。先輩は「どんど体が弱ってく姿が見ていて辛くて、恐いんだよ・・・。でも今は正直に妻に向き合いながら私が側にいなくちゃって気持ちがあるんだ・・・。手遅れだけどさ」最後に先輩は「ごめん、こんな話しちゃって。こういうの話せる人いなくて・・・」と言って謝ってきましたが「いや、先輩・・・頑張ってください。私は心から応援しています」と返す。先輩の「ありがとう」という言葉で再会を締めくくった。

私は今年に入り沢山の命を見てきた。子供の成長や山の自然、人間だけでなく動物も・・・「後悔しないように生きる」これが大事なのを気づかされました。そしてその「後悔」とは「成功や失敗」ではありません。「今行っている事全てが、納得出来る人生に繋がっているか?無意味な事や気持ちを相手や自分自身にぶつけていないか?側にいる大切な人達を分からず傷付けていないか?周りに流されていないか?」それを教えてくれたような気がします。

成功や失敗はチャレンジすれば何度でもできる。しかし、後者の意味は取り返しのつかない『後悔』に繋がるのですから・・・。

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